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2009年11月08日

最悪/奥田英郎

最悪/奥田英郎

その町には幸と不幸の見えない境界線がひかれている。事業拡大を目論んだ鉄工所主・川谷を襲うウラ目ウラ目の不幸の連続。町のチンピラの和也が乗りこんだのは、終わりのない落ちるばかりのジェットコースター。「損する側のままで終わりたくない!」追いつめられた男たちが出遭い、1本の導火線に火が点いた。

奥田英郎さんの代表作ですね。
積ん読書から引っ張り出してきました。
「最悪」というタイトルどおり、登場人物に遠慮も無く次から次へと不幸が訪れます。

小さな町工場経営者の川谷、町のチンピラの和也、銀行のOLみどり。この3人の視点からの物語。
その三人に対して「最悪」な状況へ転がっていくのだが、中でも川谷への不幸はこちらまでやりきれなくなった。
川谷に降りかかる災難の数々がこれでもかといわんばかりで、もう読んでいて痛くて辛くなってしまう。
コツコツと真面目に生活しているだけで、何も悪いことはしていないというのに。
全く接点の無い、この3人が銀行強盗をきっかけに仲間になっていく。
計画も何もなしに銀行強盗を行い、たまたま居合わせた川谷まで仲間になってしまうなんてありえない。
しかし、最悪な状況でパニックになっていく心理描写がリアリティ溢れてて、それが不自然ではないのだから、さすがとしか言いようが無い。

周りに出てくる登場人物もあ~いるいるこんな人、って人ばかり。
理詰めで川谷を追い詰めていく隣のエリートご主人。面倒を起したくない市役所職員。セクハラ支店長。ステレオタイプのヤクザ。これまたチンピラ相棒のタカオ。ちやほやされている新人エリート銀行マン。
いやだ、いやだ。
隣のご主人には、読んでいる私が代わりに殴りに行きたい衝動に駆られてしまうほどである。
まったく、人間何がきっかけで人生狂うのか分からない。
ラストは少し救われるものの、清々しいとまではいえない。
どこか他人事と笑えないリアルさが身につまされる物語でした。

途中下車を許さない展開、まさにジェットコースター。
登場人物たちの壊れていく姿が何とも自然で秀逸。

オススメ星★★★★


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Posted by いくモグロ at 21:37│Comments(0)奥田英郎
 
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