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2009年11月05日

ブードゥ・チャイルド/歌野昌午

ブードゥ・チャイルド/歌野昌午

今ぼくは第二の人生を送っています。
つまりぼくには前世があるのです。ある雨の日の晩にバロン・サムデイがやってきて、おなかをえぐられて、そうしてぼくは死にました。前世、ぼくは黒人でした。「チャーリー」それがぼくの名前でした。現世に蘇る、前世でいちばん残酷な日。不可解な謎を孕む戦慄の殺人劇に、天才少年探偵が挑む。


物心ついたときには、自分の前世の記憶があることを知っていた久坂部晃士。
前世では、黒人の家庭に生まれ、悪魔に惨殺されたという記憶がしっかりと残っている。
密かにHPを立ち上げ、その謎の解明に取り組んでいたが、明確な解答はまだでていない。
幼い頃のTVで見た内容が強烈な記憶となり、自らが体験したものと混同しているのではないかと周りは言うが、晃士は前世での記憶だと信じていた。

ある日、自宅に晃士の父親の浮気相手らしい女性から電話が入る。
「私たちの赤ちゃんについて話したい」と。
家庭を守るべく、晃士は女性に逢いに行くが、その相手には逢えなかった。
無断外泊を責められ、母親と喧嘩して飛び出し、自宅へ戻るとそこには、惨殺死体へと変わり果てた母親の遺体が横たわっていた。
母親の横には前世の記憶にあった悪魔の紋章が何かを意味するように無造作に落ちていた。
その謎を追ううちに、今度は父親までもが何者かに攻撃され意識不明の重体になり、やはり、例の悪魔の紋章が置かれていた――。

全くもって謎である。
実際に前世から悪魔のバロン・サムデイがやってくるなんてありえないことだ。
しかし、晃士の前世の記憶がドラマと混同しているものであれば、悪魔の紋章が何故、殺人現場に落ちている?
ならば、晃士が何らかのきっかけで記憶喪失になったとして、それが前世だと勘違いしているのではないか?
いや、それも黒人だったという記憶がある以上、日本人の晃士にはありえないし、何しろ晃士は生きているのだ。
生みの母親の実家に疎まれ、悪魔の子と思われていることも不可解だ。
母親の不義の子だと晃士は疑うが、だからとはいえ、母親方の両親が孫をそこまで忌み嫌うとは考えにくい。
しかも、隠されていた母親の手紙にはご丁寧にDNA鑑定書が添えられており、両親の子で間違いないと記載がある。
それにしてもDNA鑑定書って・・・浮気調査で普通、そこまで調べ上げる必要があるだろうか・・?

何から何まで繋がらない謎を一体、どんなトリックで締めるのだろうか、と正直、お手上げだった。
物語の終盤に晃士のHPで知り合ったジュリアンによって解決へと導かれることになる。
チャーリー=晃士、悪魔の紋章、母親の死、祖父母の理由、謎の外国人、聖書の秘密、全てが綺麗に解決される。
バラバラだったピースがこれまた、見事に収束され、何ともいえない快感が味わえる。素晴らしい。
謎解きに重点を置いたミステリーでは、どこかで強引さがあったりして、気持ち的にすっきりしない部分があるものが多いんだけど。
本書は謎の一つ一つに、それこそどうでもいいようなことすら、きちんと意味があって説得力があった。
久しぶりの本格推理モノ。かなり面白かったです。

オススメ星★★★★★


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Posted by いくモグロ at 11:46│Comments(0)歌野昌午
 
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