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2009年11月12日

虚貌/雫井 脩介

虚貌/雫井 脩介

21年前、岐阜県美濃加茂地方で、運送会社を経営する一家が襲われた。
社長夫妻は惨殺され、長女は半身不随、長男は大火傷を負う。
間もなく従業員3人が逮捕され、事件はそれで終わったかに見えたが…。


麻雀で50万の借金を背負い、それに追い討ちをかけるように、仲間と共に職場を解雇された荒。
その仲間に社長の家を襲撃しようと持ちかけられ、勢いに乗せられて犯行に加わってしまう。
だが、その仲間たちは荒を主犯格に仕立て上げるという別の計画があった――。
それから20年後、荒は仮出所を迎える。
荒が出所してから、次々に事件の関係者が殺されてゆく。

私も女性ですから、自分の顔にコンプレックスが無いわけではない。
年齢を重ねると違う悩みが出てきたりで容姿の不満を言い出すと忙しい(笑)
だが、ごく一般的なレベルだと思う。
醜形恐怖症と言える朱音や大きな痣に悩んでいる辻などを見ると本当に痛々しい。
その朱音が北見先生と出逢って、心を落ち着けていくのが嬉しかったのだが・・。
その北見先生の正体が下巻中盤辺りから浮き彫りにされてくる。
色んな仮面を持つ吉良だが、カウンセリングとしての北見先生が本当の姿だと信じたい。

さて、トリックについてだが、整形だと思ったのだが・・時間が交互したり、足り無すぎる分で考えにくい。
一体、どうやって入れ替わったのだろう・・?滝中は麻雀屋の事件の直前に相手の顔を見ているのだ。
・・・・まさかそういうトリックでくるとは。
マンガチックといえばそうなんだけど、清見塾での細かい説明が説得力を出しているし、実際、映画での特殊メイクもおどろおどろしいものばかりでは無くなっているのだから非現実ではない。
そこで、ああっ!吉良の事件当日に彫刻や絵画が得意で手先が器用とあったではないか!
そういえば!!直前にお風呂場で口ずさんでいたのは・・・。

うまいなぁ・・きちんと伏線になっている。
モノマネもその一環だろう。
最後はどうなったんだろう、吉良はどうして、否定したんだろう。そこがちょっと「?」となったのと、有田三兄弟のことはいらないかな。
どこかで吉良がまた違う顔で生きている姿を見てみたい。
真相にも驚いて素晴らしかったが、人物描写がみっちり書かれていて、それぞれの気持ちに感情移入してしまう。
何から何まで救いの無い物語だし、冒頭の事件の凄惨さはリアリティたっぷりで生々しい。
実行犯が全て殺されたのが、どこかで溜飲が下がったのだけど、せめて関係の無い朱音は生きていてほしかった。
北見先生によって立ち直ってほしかったな・・。
でも、一気読みで素直に面白かったのは確か。

「眼、鼻、口、耳・・・こういうものは感覚器官です。それが寄り集まっている。決して優雅なものではない。・・・顔というものは見れば見るほど不気味であって当然なんです」「大事なのは表情なんです。」
「笑顔に勝る仮面はないということです」


オススメ星★★★★


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Posted by いくモグロ at 22:28│Comments(0)雫井脩介
 
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